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アメリカ全体の共和制の健全化,habits of the heart心の習慣 [言葉の定義に拘り過ぎ]

政教分離の話とまぁ少し分けながらなのですが、市民社会とそれから宗教の問題ということなのですが、非常に島薗先生は重要な本を訳されていて、ロバート・ベラーという人の『心の習慣』という本なのですね。「心の習慣」という言葉は政治学者にとってはピンと来る言葉でして、これはトクヴィルという人が使った言葉なのですね。トクヴィルというのは、私も一応今大学で政治学っていうのを教えてるものですから、デモクラシー論というのを教える時には真っ先に教えなければならない人物ですね。トクヴィルという人は『アメリカのデモクラシー』という本を書いた人物で、彼はフランス人です。フランスがフランス革命をやったにもかかわらず、デモクラシーの国だという自意識を持っているにもかかわらずフランス革命以降、フランスは独裁者を選んでいく訳ですね。まさにそのデモクラシー故に。何故フランスではこういうふうにデモクラシーが崩壊していくのか、そういうのにぶち当たった若きトクヴィルは、アメリカに行ってそのデモクラシーとは一体どういうものなのか。アメリカの方がどうも上手く行ってるっぽいぞ、いう風に彼には見えた。のちにアメリカも上手く行かなくなるだろう、って彼は書いていますけれども。じゃあどういう要素によってアメリカはこのデモクラシーがそれなりに機能しているように見えるのか、と考えたときに。

 トクヴィルの結論は簡単に言うと、実はデモクラシーの重要なポイントっていうのは、国家と個人の間にある中間領域っていうのが重要である、って考えるんですね。人々が個人だけではなくて、トクヴィルが例えば非常に重要視したのはchurch教会ですね。教会に週末になったら通う。そうするとその教会に通うと勿論宗教的な話をする訳ですが、それだけではなくてですね、「いやちょっと最近あそこの川汚いね」と。「一斉清掃しましょうね」っていう話合いが行われたりとか。「最近どこそこの誰々さんが来てないね、一緒にあのノックちょっとしに行きましょうか」とか。そういうような小さなパブリックってのが生まれてくると。他者との間のそういう様々な合意形成をするような、今の言葉でいうとソーシャルキャピタル社会関係資本のようのなものが生まれてくる。そうするとそこからですね実はデモクラシーの非常に重要な土台が生まれ、それが延いてはアメリカ全体の共和制みたいなものの健全化に繋がっているんじゃないのか? つまりデモクラシーにとって重要なのは実は人々が他者とこういう風に顔を合わせそして合議をしていく具体的な場である。そしてそこにおいて様々なものを決定していくというタウンシップという言葉を彼使っていますが、それがアメリカのhabits of the heart心の習慣というものではないか。この伝統こそがデモクラシーを上手くやっているっていうそういう議論。ですからデモクラシーにとってはこの宗教的な中間領域っていうのが重要である、というのがトクヴィルの一つのテーゼである訳ですが、これを現代に引き継いだのがベラーという人ですね。ベラーは市民宗教というのを考えました。アメリカが行き過ぎた個人主義にどんどんなっていけばなっていく程、デモクラシーが破綻していくとするならば、もう一度アメリカのhabits of the heart心の習慣を思い出そうぜ。そのときにもう一度宗教的なとこに関与するようなそういうようなルートをもう一度市民宗教として立直そうというのが、ベラーのテーゼですよね。

45:04~48:11
中島岳志(政治学者)×島薗進(宗教学者) ナショナリズムと宗教を問い直す
https://youtu.be/dR0hmJt9G7I?t=45m4s

心の習慣―アメリカ個人主義のゆくえ

心の習慣―アメリカ個人主義のゆくえ

  • 作者: ロバート・N.ベラー
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 1991/05/08
  • メディア: 単行本



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