SSブログ
人気ブログランキングへ 拍手する

アダム・スミス『国富論』――「良い統治」と経済活動 [思想]

『国富論』は経済学を初めて科学的に体系づけた大著

1.政治と経済
政治を徳、宗教、さらには軍事との関係で論ずる伝統からすれば、経済活動は総じて周辺的で、従属的な活動領域でしかなかった。
家政術(oikonomike)
経済生活の安定的「停滞」をほとんど自然のものと考える発想とつながっていた。
経済活動が政治の主要なテーマとして登場する新しい事態の到来を告げた
人民の富裕をどのようにして促進するか
政府が公共の業務を遂行する上で十分な収入をどのようにして確保できるか
重商主義 や 重農主義 などそれまでの回答とは違った独自の回答にあった

2.分業体制と自愛心
あらゆる生活必需品は究極的には労働の成果である
文明社会 野蛮
自然的経済関係 の分析がスミスの第一の課題であった
分業 こそ生産力を高めた最大の原因である
有名なピン製造の実例に即して
生産物が増加し、社会全体に豊かさが拡がっていく
一つの計画によって意図的に作り出されたものとしてではなく
人間の本性、すなわち「 交換 する」性向
他人の仁愛(benevolence) に専ら期待して同胞の助力を得ようとするのではなく
同胞の 自愛心(self-love) に訴える
この議論の大切な点は、人間同士の協力関係を徳の涵養によって初めて可能になるものと考えてきた伝統と大きく異なっているという点である。
神の見えざる手
によって相互協力と豊かさの増大に寄与しているものとして新しい意義を与えられている
格別な指導や教育を必要とせず、 人間の自然に根拠を持ち 、従って、大衆を巻き込んだ巨大なシステムを生み出す
貧民をも巻き込んだ経済の好循環が実現する
その際に最も大事なのは、各人の選択を完全に自由に放置しておくことに他ならない。

3.政治への視点の重要性
道徳哲学
正義
自然の運行
経済的自由主義
自由放任主義
政府の役割や統治のあり方がいかに重要であるかを『国富論』は繰り返し強調していることもまた大切な点である
「自然の運行」は一定の制度環境の下においてこそ初めてその力を発揮できるのであって、決して無前提的にいつでもどこでも現実のものとなるわけではない。
良い統治
見える手
経済活動の最も活動的な担い手である「利潤を追求する人々」の場合、社会全体の利益よりも自ら属する特定部門の利益に多くの関心を向け、しばしば競争を制限する方策などによって他の階級に負担を押しつけることをしてきた
地代 や 賃金 によって生活する階級
「良い統治」の担い手として期待したのは地代によって生活する階級、その中でも社会の複雑な利害関係について十分な知識を持つ人々であった

佐々木毅『政治学の名著30』ちくま新書2007
下線及び斜め文字、「 」(:半角スペース)挿入と、便宜上各セクション冒頭に通し番号及び.(ドット)の付与を催すは、本blog。>
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。