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「家族、このすばらしきもの」という価値観 ~美しい国再読~ [読み物]

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 わたしには子どもがいない。だからこそよけい感じるのかもしれないが、家族がいて、子供がいるというのは、損得勘定抜きでいいものだなあ、と思うことがよくある。
 少子化に関する世論調査で「お金がかかるから産めない」あるいは「産まない」という答えをよく目にする。たしかに子育ては大変でお金もかかり、何かを犠牲にしなければならないかもしれない。しかし、そうした苦労をいとわない、損得を超えた価値があるのではないか。
 子どもというのは、親の人生に圧倒的な充足感を与えるものだ。とくに三人以上の子をもった人たちは、充足感が高いという調査結果がある。
 当たり前のようだが、わたしたちは、若い人たちに「家族をもつことのよさ」「家族のいることのすばらしさ」を教えていく必要があるのではないか。いくら少子化対策によって子育てしやすい社会をつくっても、家族とはいいものだ、だから子どもがほしい、と思わなければ、なかなかつくる気にはならないだろう。
 家族が崩壊しつつある、といわれて久しい。離婚率が上がり、シングルマザーやシングルファーザーに育てられた子や再婚家族の子も増えている。現実問題として、少年院に収容されている少年たちの九割近くが、家族に問題を抱えているといわれる。
 誤解されると困るが、そういう家庭に育った人が不幸せだとか、問題を起こすというつもりなど毛頭ない。私の父親の安倍晋太郎も、生まれたときに両親が離婚して、父・安倍寛の郷里に引き取られ、大伯母に育てられた。
 戦時中、翼賛選挙に抗して軍部の弾圧を受けながら代議士を続けた安倍寛は、戦争が終わってこれからというときの一九四六年(昭和二十一年)に五十一歳で急死した。晋太郎が大学生のときだった。
 顔も知らない実の母親を探し歩いたが、再婚先でとうの昔に亡くなっていた。母親代わりだった大伯母も、寛のあとを追うように亡くなった。このとき、わたしの父は、天涯孤独も同然の身の上になったのだった。だから、わたしの父は、母親の愛というものを知らない。「わたしは、ずうっと母親が欲しかった」とよくいっていた。親がいなければ、どんな人間でも淋しい思いをするものだ。
 家族のかたちは、理想どおりにはいかない。それでも、「お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ」という家族観と、「そういう家族が仲良く暮らすのがいちばんの幸せだ」という価値観は、守り続けていくべきだと思う。

第7章 教育の再生
「家族、このすばらしきもの」という価値観
217~219頁
美しい国へ (文春新書)

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  • 作者: 安倍 晋三
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 新書



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